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映画『歳三の刀』ロシア撮影レポート by 増山麗奈監督

特別記事 剣術/居合/刀剣 増山麗奈(映画監督 一般社団法人ユーラシア国際映画祭代表理事)

侍映画をロシアで撮影!

9月9日から9月21日まで、ロシアのウラジオストク・ブラゴベシチェンスクに渡航し、日露合同映画「歳三の刀」の撮影を行った。この映画は2019年に発想し準備をしてきた"土方歳三が函館からロシアに渡った"という歴史ファンタジーストーリーだ。パンデミックがなければ昨年撮影開始予定だったが、何度か撮影が延期して2021年6月に日本でクランクインをした。ようやく日本からロシアへの渡航ビザ発給が叶い、9月のロシアアムール州州都アムールの秋映画祭と連動し、ブラゴベシチェンスク市での撮影が実現した。

 

ロシア極東で唯一の映画祭で、招待された唯一の外国人

歳三の刀3.jpg日本から土方歳三役の源光士郎、中国人メイド役の華ケ瀬喜子、監督の私、増山麗奈が渡露した。またモスクワ在住の日本人俳優、木下順介氏が榎本武揚役を演じ、映画祭に参加した。

ロシア極東のアムール州州都、ブラゴベシチェンスク市に着いて、ロシア側の熱量の大きさ、今回の映画撮影の企画の凄さに改めて気がついた。毎年極東ではウラジオストクで国際映画祭が開催されるほか、サハ州でも大きな映画祭が開催されているが、今年はパンデミックの影響で、極東での映画祭はアムールの秋映画祭一つのみ。その中でロシア人以外の外国人映画関係者の私たちのみだったのだ。映画祭に参加するロシアのスターたちに聞いても「パンデミックで中国やアメリカの仕事は全てなくなった」と言う。

ブラゴベシチェンスク市はアムール川に挟まれ中国と接しているが、中国との国境は封じられたまま行き来が禁止。世界的にも国際交流が止まっている中、私たちは国際映画を撮影する奇跡の時間を過ごすことができた。

超大物俳優たちがスタンバイ

映画撮影には、6年間ロシア全土でテレビドラマ「デフチョンキ」で主演を張ったナスチャ・デニソワが土方歳三と恋に落ちるヒロイン役、STSテレビチャンネルのテレビドラマ「モロジョージュカ」有名ドラマで主演を演じるヴラジスラフ・カノプカがニコライ二世役を演じるなど、キムタクや米倉涼子バリの有名俳優女優が撮影に参加した。

ロシア語がさっぱりわからない私たちをサポートしてくれたのはバレエや映画祭などの日露コーディネイトを多数手掛ける通訳・コーディネイターのドミトリー・トカチェンコ。ありとあらゆる微妙なニュアンスを通訳してくれた。

撮影の最中に、ブラゴベシチェンスク市は選挙があったのだが、消防車を手配し、車両を燃やす許可を警察に申請し、車の爆発シーンも撮影した。

改めて本企画のロシア側代表であるセルゲイ・ノヴォジーロフ代表、主演のマキシム・コロソフ氏に感謝の気持ちが溢れてくる。パンデミックの間にも企画を諦めず20回以上ズームの会議を続けて一緒に台本を作り上げてきた日々が思い出され、胸がいっぱいだ。

ちなみに日本では新撰組をモチーフにしたフィクション映画はよくあるが、ロシアでは歴史上の人物が登場した際、史実を曲げてはならないという無言のルールがあり、ニコライ2世が出演する今回の歴史ファンタジー映画は稀。
毎年ロシア文化庁の予算で13回もの映画祭を主催するセルゲイ、マキシムたちにとって、規格外中の規格外の映画を取り組んでくれたことになる。しかも撮影の設定は1991年、大津事件で切りつけられた後ウラジオストクに渡った後のニコライ2世(当時皇太子)。日本の侍と刀で向き合うシーンというのは、政治的な意味でもかなりリスキー。よく企画が通ったものだ。

歳三の刀3.jpg

撮影班の技術の高さ!

ロシア側の映画監督アンドレイ・ムイシュキン監督率いる撮影チームの技術の素晴らしさ、照明の素晴らしさには目を見張りました。150年前の歴史的建造物の中ではオレンジの光を天井に当て、風情を出し深夜の森の中では松明の明かりを表現する光の前に手を揺らして自然な光を作り、車のライトも自由自在に扱い、画角の中で絶妙な影絵の動きを作り出す。あるもので、ある予算の中で、常に最高の絵作りをしてくれる。

FIFAのワールドサッカーや、コカコーラ、アディダスなどの映像制作も取り組んでいるアンドレイ監督率いるマキシム代表の撮影チームは、アクション撮影も絶妙でダンスや空手も行い勢いのある絵を作り出す。毎日午前中から翌朝の6時まで重い機材を抱えながら文句一つ言わず、撮影を黙々と進める体力・バイタリティもすごい。「このチームなら時代劇ではないかつてないアクション映画を作れる!」と確信。アンドレイ監督の撮影チーム、マキシム撮影監督もぜひ日本に招聘しよう。

歳三の刀写真1.jpgロシアチームは演技もすごい。一流の仕事をしている彼らは演技をするときに「人物像・年齢・感情・恋愛感情・相手への心をどのぐらい許しているのか・不安感・感謝」そういった要素をスーパーコンピューターの様に論理的に分析し、監督とともに設定を練り上げ、カメラを向けると一寸違わずその感情をカメラの前で輝かせるのである。
オンとオフの違いもすごくてカメラが回っていない間は歌ったり踊ったりジョークを連発しているのに、カメラが回ると一瞬にしてその役になりきる
そう言った演技力の高さは日本の俳優さんたちにぜひ伝えたい。ロシアの演技メソッドを学ぶ場を作りたい!と強く感じた。

元々が舞台が多い源光士郎さんは、慣れないロシア語のセリフに苦労しながら撮影をしていた。その源さんに対して、ナスチャ・デニソワはロシア語のセリフを短くし、的確に演技指導もしてくれる。結果、ナスチャを信頼した源さんからは本当に感謝と愛情の眼差しが生まれて最高のカットを撮影できた。

プロとして自分が与えられた仕事をしながら、現場にあるもの時間予算の中で最高のカットを作ろうと、あらゆる工夫を自然に行うその姿に感銘を受けた。感謝の気持ちでいっぱいである。

アクションシーンでは、遠隔で天然理心流試衛館館主の髙鳥天真氏の遠隔指導もあった。全てが初めて。クリエイティブな現場である。

写真は、土方歳三が働くウラジオストクの名家ポリャコフ商会のジーマ社長を演じるヴラジスラフ・シュクリャエフ。子供の頃から演劇に親しみ、両親とも俳優。90年代ソ連崩壊後ロシア国内での映画が撮影できなかった時代にはドイツで俳優をしていたという名優だ。
「自分は、大きな役であろうと小さな役であろうと、構わないんだ。仕事として演技ができればその中で最高の仕事ができればいいと考えている」と語った。

映画制作によって"義"の社会を作っている

ロシアの映画人たちは俳優部にしても演出部にしても撮影部にしても皆、「芸術は人々の心を豊かにして、癒し、力を与えるもの。その芸術は脈々と過去から現在まで受け継がれていたもので、私は今その一部に参加している。それはとても名誉であり光栄なことだ」という認識を持っていた。

その広い映画・芸術の認識は、資本主義社会の中で「自分だけが売れよう」というショービズの中ではなかなか無いもの (と言いながらも皆、ロシアの本当のスターであることもすごい)。
その感覚は、ある意味新撰組の時代の剣士たちが持っていた、誠のためなら命を捧げるという〝義〟の精神に通じるものがある。

歳三の刀2.jpg今回ロシア側との合同制作によって、その豊かな芸術への認識を共有し、日本の俳優・映画関係者の皆様、応援してくださる皆様に豊かな時間、果実を還元したい、と強く感じた。

録音部のヴァーシムは、アンドレイ監督とは、2017年の「予想外の出来事」、2019年中国合同映画の撮影でも一緒に参加した仲間である。「映画製作は仕事だけれど、僕たちは撮影の時に人生のひと時を共有する。できたらその時に良い人たちが周りにいてほしい。僕らはチームなんだ。いいチームがいれば、映画は成功する」と録音部のヴァーシムは語る。

信頼できる最高のチームと撮影ができたことは私たちのかけがえのない喜びである。

次は11月、12月に日本に彼らを招聘します。
この映画制作を通じ、互いに尊重しあい輝かせる素晴らしい社会を作ることができるという強い確信をロシアで得ることができました。

ロシアに私たちが渡航するときは14日間隔離がないけれど、日本にロシア人たちを招聘するときは14日間の隔離が必要。査証発行も簡単ではありません。
なんとかパンデミックを収束させ、できたら陰性証明発行・3日間隔離ぐらいでロシアから俳優・カメラマンたちを招聘し、映画「歳三の刀」を日本で撮影したいなぁ。

日本の武術を、ロシアのチームがどんな映像にするのか。ご期待ください。

レポート by 増山麗奈(映画監督 一般社団法人ユーラシア国際映画祭代表理事)


◎日露合同製作映画「歳三の刀」HP:https://toshizonokatana.com/

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