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【特別インタビュー】クラヴマガ”マスター”エヤル・ヤニロヴが語る「世界市民のための護身術」後編


"自然な反応"から導かれる護身と防犯の「戦略的システム」とは!?


"激戦地"イスラエルで生まれ、その類稀な即習性と実戦性の高さから、世界中の軍隊や民間で広く学ばれている「クラヴマガ」。この度、その最高峰の"マスター"エヤル・ヤニロヴ師範が11年振りに来日した。
" 近接格闘術"から"護身術"へ、そしていまや、"防犯"も視野に入れた戦略的システムである「クラヴマガグローバル」へと進化を遂げた、"プログレッシブ 護身術"の現在地とは!? エヤル師による来日セミナーの模様は、秘伝6月号特集内にて詳しくレポートしているのでぜひご覧いただきたいのだが、ここでは セミナーを主催したクラヴマガグローバル・ジャパンのご協力の下に実現した、クラヴマガグローバル(KMG)代表 エヤル・ヤニロヴ師への特別インタビューの模様を前後編にわたって紹介しよう!
(前編はこちらから)

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Q.武術の最先端、時代の問いに、イミ・リヒテンフェルド先生(クラヴマガ創始者)の原理で、新らたな解決策をいくらでも探していけるのか? いくらでもトレーニングや考え方を作っていけるのか?

A.(エヤル・ヤニロヴ) クラヴマガは20世紀に構築されたものです。クラヴマガは、絶えず前進しています。私たちの組織では、イミがいた時も、今も、進化が止まった時期というのはないのです
th_IMGP6432.jpg例えば、この瞬間、誰かが火星に上陸したことで問題が起きたとします。この問題は、今まであった問題とまったく類似性がありません。この場合は、私たちは解 決法を見つけることはできないと思います。でも、今まであった問題と類似性のある問題で、もし、その問題に直面した時に、思わずとってしまう人類の自然な 反応があり、人間が、誰も教えなくても自然な反応ができるという能力がある限り、私たちは(クラヴマガで)解決策を見つける道があると思います。なぜな ら、クラヴマガが作られた方法は、問題の性質、攻撃者の自然な態度と自然な反応を考慮することに始まっているからです。

例えば、攻撃者がナイフを持つ時、掴んだナイフを小指側から刃を出して、一方向に持ちます。そして、たぶん相手をつかんで、バンバンバンバンと、何回も刺します。これが攻撃者が誰かを刺そうとする時の自然な(通常の)態度になります。
そして、"攻撃する側"の「自然な反応」と、"攻撃される側"の「自然な反応」というものがあります。
クラヴマガの基本テクニックは、防御者の自然な態度を考慮して作られています。 例えば、防御者の自然な態度が、手を上げることなら、テクニックとしては、手で防御し、手で相手の顔に反撃のパンチを繰り出すことになります。
もし、防御者の自然な反応が、後ろにこのように一歩下がることであれば、防御はキックになります。重心が後ろに動いたからです。そして、その後も(最初の反撃の後も)、防御者は、攻撃者の自然な反応と態度に対応し続ける必要があります。
つまり、クラヴマガの基本テクニックは、防御者の自然な反応や態度を考慮し、攻撃者の自然な反応と態度に対処するよう作られています。

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Q.通常、武術は向かい合ったところから始めるのに、今日のセミナーでは、立ち去ろうとする相手の後ろについていくという状態から始まったことの目的は?

th_IMGP5736.jpgA.クラヴマガでは通常は、二人が向き合った状態から教え始めます。ただ、練習のとても早い段階から、もし攻撃者が横から来たらどうするか、後ろから来たらどう するか、と教え始めます。2番目のレベルになると、二人攻撃者がいたら、という問題にも取り組みます。いつも複数の攻撃者がいる状況を想定して練習しま す。クラヴマガは、全方位に向けて練習しなければなりません
同時に、クラヴマガは、全ての姿勢で練習しなければなりません。 今、座っていますよね。このように座った状態からテクニックを始めるということもしなければなりません。立っている場合、地面に座っている場合、地面に仰 向けで寝ている場合。また、ジョギングしている時、攻撃されたらどうするか、歩いている時は?
これが人生です。人生にはいろいろなことが起きます。いろいろな問題が起きます。人生はダイナミックなものです。これが「新しいクラヴマガ」です。
80年代より私たちが続けてきたのは、こういうクラヴマガです。私たちは、生徒たちに、現実を理解させるため、いろいろなタイプのシミュレーションを体験させていきたいと思っています。



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Q.ジル・イザール先生(クラヴマガグローバル(KMG)日本代表)から見て、エヤル先生のすごいところは?

th_IMGP6509.jpgA.(ジル・イザール)  私がクラヴマガを始めたのは、6年ぐらい前になります。最初は、もちろん、当時住んでいた国のインストラクターに習いました。その後、ある時点で、イスラ エルのエキスパートに習いたいと思い、イスラエルに行きました。そこでクラヴマガのエキスパートに会いました。彼らが教えるのを見学したり、実際、自分も 直接教えてもらいました。すごい人たちばかりでした。
彼らは、エヤル先生のチーム**のメンバーでもありま す。彼らの教え方、テクニック、能力、速さ、テクニックの力強さに驚きました。特に、教え方もすごい、人へのテクニックの見せ方(デモストレーション)も すごい、ということで、感銘を受けました。こんな風に教えられるインストラクターになりたいと思いました。
その後、イスラエルにもう一度行き、イ ンストラクターになるためのコースに参加しました。エヤル先生のチームのインストラクターたちに教えてもらいました。どのようにインストラクターになる か、どのようにクラヴマガを教えるか、テクニックをどのように上達させていくか、など教わりました。
IMGP6522.jpgエキスパートに囲まれた環境で、インストラクターたちの教え方が上手い、テクニックが上手い、と感動しながら、教えてもらっていました。これ以上、上手い人たちはいないだろう、と思っていました。

それから、プログラムが終わる数日前に、エヤル先生が、海外のセミナーから帰ってきて、私たちのプログラムに、講師として参加し、直接教えてくれることになりました。エヤル先生は、テクニックを教えてくれた他に、どのようにテクニックを教えるか、どのように人にテクニックを見せるべきか、と教えてくれました。
そこで、エヤル先生とエキスパートのレベルの差を思い知らされました。
私は、教えてもらっていたエキスパートたちより上はいないと思っていました。でも、エヤル先生が、クラヴマガのシステム、教え方、どのようにテクニックの細かい部分を教えていくか、テクニックはどうするか、などを教えてくれました。その時、私は、なぜエヤル先生が「マスター」なのか、わかりました。他の人とのレベルの差は歴然としていました。カテゴリーからして違ったのです。本当に驚きました。
それ以来、エヤル先生のビデオを見たり、コメントを聞いたり、デモストレーションを見ると、先生の教え方、テクニックのやり方、動き方を始め、学ぶものが、いつもたくさんあります。

th_IMGP6494.jpgエヤル先生のすごいところは、テクニック自体はもちろんですが、「なぜこの時はこのテクニックなのか」ということの理解を深めさせてくれることです。私は 25年ぐらい武術を練習しています。柔道10年、テコンドー7年、その他の武術、合わせて25年ぐらいになります。ですが、なぜこの時はこのテクニックを使うべきなのか、ということを教えてくれるシステムに出会ったことはありませんでした。
私 が習ったのは、どうやってキックするか、どうやって防御するか、どうやって練習するかでした。もちろんそれぞれの武術の効果は高いと思います。ですが、私 が出会った武術の中には、特定の攻撃・特定の状況に対し特定の防御で対応することでシステム全体が構築されていて、そのテクニックは、人間の自然な反応を 基礎に置いている、と言ったクラヴマガのようなシステムではありませんでした。
そして、エヤル先生と会って初めて、人間の自然な反応に基礎を置くという理屈が本当に理解できました。道理にかなっていると思いました。

エヤル先生も言ったように、自然な反応はこうなんだ、ということが分かると、そこを出発点として、ほとんど全ての問題に答えを導き出すことができるのだと確信することができます。そして、(クラヴマガは)そこが本当に面白いと思います。
通 訳者注 ** クラヴマガグローバル(KMG)には、エヤル・ヤニロヴの指導の下、トップレベルのインストラクターのチームがあります。その名は「グローバル・チー ム」。チームは、インストラクターの教育、ワークショップの開催、スペシャリスト・コースの開催を担当し、世界中で活躍しています。

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(後編 了)




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左:エヤル・ヤニロヴ師 右:ジル・イザール師(クラヴマガグローバル・ジャパン代表)

Profile エヤル・ヤニロヴ Eyal Yanilov
ク ラヴマガグローバル(KMG)代表兼ヘッド・インストラクター。イスラエル在住、1959年生まれ。1973年より創始者イミ・リヒテンフェルドから直々 にクラヴマガを習い始める。1980年代初めから、イミの右腕としてアシスタントを務める。イミ自身から、最高位の「マスターレベル3」、「創設者認定優 秀証書」を授けられる。また、イスラエル・クラヴマガ協会プロフェッショナル委員会の委員長として、技術面、戦略面の両面からクラヴマガを整理・体系化、 新たに現代的なカリキュラムを作り上げた。1990年代半ばには、国際クラヴマガ連盟(IKMF)を設立、世界中でクラヴマガを教える。2010年、世界 に本物のクラヴマガを普及させるとともに、そのトレーニングのレベルを最高に保つため、プロ集団クラヴマガグローバルを設立。




◎Krav Maga Global( イスラエル本部) http://krav-maga.com
◎クラヴマガグローバル・ジャパン http://www.kravmaga-japan.com/
◎関連記事:月刊秘伝2017年6月号「特集 プログレッシブ武術」

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