月刊秘伝2024年12月号
■特集 力を0化する!!
武術が到達した“柔の極致”
化勁
序章『化勁とは何か』
第1章『化勁の実戦用法』 宮平保(天行健中国武術館)
第2章『合気と化勁を繋ぐ術技』 高瀬道雄×臼井真琴×有満庄司
第3章『推手で磨く化勁の理』 日本武術太極拳連盟
第4章『化勁を錬る一人稽古』 遠藤靖彦(太我会)
■巻頭グラビア
中達也「形稽古の極意指南!」
佐久間錦二「新始動! 佐川合気実験室」
ベンジャミン ……
新御番鍛冶プロジェクト実行委員会は、2021年10月16日より、隠岐神社(島根県隠岐郡海士町)にて、新御番鍛冶プロジェクトを開始します。
今年は「承久の乱」(1221)に敗れた後鳥羽院が、隠岐国(現:島根県隠岐郡海士町)に流刑となって800年の節目の年。海士町では、"つながる"(800年前と今、そして未来へ)をコンセプトに「後鳥羽院遷幸八百年記念事業」として、後鳥羽院にゆかりのある様々なイベントを開催しています。(後鳥羽院遷幸800年記念顕彰事業特設サイト https://www.gotobain-kensyo.com)
「新御番鍛冶プロジェクト」は上記顕彰事業の一環として行われる取り組みで、後鳥羽上皇のお抱えになった御番鍛冶の伝承を現代に甦らせ、後鳥羽院を祀る隠岐神社に最高峰の日本刀を奉納し続けることで、後鳥羽院の思いと、彼の愛した日本の刀剣文化を記憶、発展させることを目指して走り出しました。
本プロジェクトでは、現代の名刀鍛冶12名が新御番鍛冶となり、後鳥羽院の祀られている隠岐神社に奉納刀を収めていきます。
御番鍛冶の作刀、奉納の資金はクラウドファンディング(MAKUAKE)によって集められます。
*10月16日(土)17時30分より開催されるクラウドファンディング
https://www.makuake.com/project/shingobankaji/
は、第1刀目の作刀・奉納分となります(計12回のクラウドファンディングを予定しています)。
▼特徴・詳細
後鳥羽院(第82代天皇1183〜98)は文学、芸術に優れ、武芸にも秀でた稀な才能を持つ天皇でした。芸術を尊重し、才能のある職人を庇護したとも伝えられています。
特に日本刀に関しては強い思いを持っておられたと言われ、刀剣の鑑定の御眼識にもすぐれていました。上皇となられてからは、後鳥羽上皇ご自身が作刀の最前線に立たれたことでも有名です。また後鳥羽天皇は、刀鍛冶を招聘し、刀を鍛えたという伝承「御番鍛冶」が残っており、その伝承にちなんで、12名の匠に800年記念にふさわしい刀の奉納を行ってもらいます。
クラウドファンディングは、令和3年(2021)10月16日(土)17時30分にMAKUAKEのプラットフォーム(https://www.makuake.com/project/shingobankaji/)でスタートし、来年2022年1月12日(水)まで皆様の支援を呼びかけます。
この日、隠岐神社では秋の大祭が執り行われ、プロジェクトの成功を祈願して月山貞利氏による神前鍛錬を奉納します。
奉納刀は、およそ1年〜1年半をかけて制作され、完成次第、隠岐神社の大祭にて「奉納の儀」を執り行います。
第2刀目以降の作刀については、後鳥羽上皇が月番で各地の刀匠を招致していたことにちなみ、御番鍛治に任命された刀匠と、リターンや告知の準備が整い次第、開始されます。
プロジェクトは、12振りの奉納刀が揃うまで、年月を跨いで行われます。
12振りの奉納刀は、隠岐神社に隣接する後鳥羽院資料館に順次展示される予定です。
◆第一弾作刀 月山貞利氏◆
今回、神前鍛錬と作刀第一弾を務めていただくのは、月山貞利氏(奈良県指定無形文化財)です。
36歳で新作名刀展無監査に認定。大阪月山家の5代目として、精力的に活動されています。
社寺の奉納刀や横綱土俵入りの太刀の制作をはじめ、世界中から注目を集める刀匠です。
月山氏と隠岐神社の関わりは、隠岐神社創建当時からのもので、先代の父の月山貞一氏(二代)(人間国宝)につづき、二代目。先代も神前鍛錬の奉納を行なっています。奉納刀は、後鳥羽院資料館で閲覧できます。
後鳥羽上皇が刀を鍛錬されてからおよそ800年。日本刀は歴史の中で武器としてだけでなく、美術品としての価値を見出され、これまで多くの刀鍛冶によって作られてきました。
20世紀の戦乱とその後社会環境の変化を境に、日本刀の制作本数は急激に減少しています。
現在、日本刀を作刀する資格を持つ刀鍛冶は、全国でおよそ200名。そのうち、刀鍛冶一本で生活を確立できる刀鍛冶の方は、およそ7分の1の方々のみなのです。
日本刀の文化的価値は世界が認めることですが、武器である上の規制がかけられてきた背景もあり、刀鍛冶を取り巻く現状は決して良いものとはいえません。
日本刀が作られなくなるということは、これまで日本人が日本刀に見出してきた、精神性の消滅のみならず、世界最高の鋼鉄加工技術を失うことに他なりません。
こうした現状を憂い、日本刀をつくり続けることができるプラットフォームを作りたいと考え立ち上がったのが、今回の日本刀キュレーターであり、プロジェクトの発起人であるポール・マーティン氏(※月刊秘伝2021年9月号記事掲載)です。
日本刀および刀鍛冶の社会的地位を高めた功労者である後鳥羽院の足跡をたどり、隠岐神社に辿り着いたマーティン氏は、この地にこそ、日本刀の作刀技術を継承する拠点を作るべきだとして、後鳥羽院の祀られている隠岐神社に働きかけました。
このプロジェクトは、海士町の人々の思いと合致し、配流800年を迎える2021年の節目の年に、記念事業として立ち上がったのです。
◆隠岐神社創建の経緯と昭和御番鍛冶
隠岐神社が創建されたのは昭和14年(1939)。後鳥羽院が崩御されて700年という貴重な節目の年でもありました。明治6年の神霊御還遷により、後鳥羽院をお祭りしていた山陵が取り壊しとなりましたが、島民が祭祀を続けたこと、また皇紀2600年を間近にした奉祝の機運もあり、島根県や著名な方々の働きかけにより隠岐神社の造営に至りました。
この年、後鳥羽院の御霊を祀った水無瀬神宮と隠岐神社は、創建を記念する行事の一環として、昭和の名匠らによる奉納刀を作刀、「昭和の御番鍛冶」が25振りの日本刀を奉納しています。(内15振が水無瀬神宮へ、10振が隠岐神社に奉納されました。この10振は後鳥羽院資料館に展示されています。)そんな島民の思いで完成した隠岐神社も創建80年を迎えました。
人口わずか2000人の小さな島では、800年間絶えることなく、"ごとばんさん"の伝承が語り継がれてきました。
今年はその節目の年にあたり、800年の顕彰事業を通して、未来に何をつないでいけるのか模索をしています。
◆今後の展望
また、日本刀作刀の費用を全世界の皆様にご協力いただく中で、もし資金面に余裕が出てきましたら、後鳥羽院資料館の修繕も行いたいと考えています。
(※新型コロナウィルスによる緊急事態宣言で多くのイベントが2022年に延期されていますので、詳細や期日に関しては、逐次海士町の顕彰事業サイトよりお問い合わせを願います。)