真蔭流柔術、秩父伝気楽流柔術などを伝承し、本誌「秘伝」では創刊当時より執筆陣の一人として多大なご協力をいただいた山田實先生が、4月12日(金)11:30、誤嚥性肺炎によって御逝去されました。享年88。
山田先生は昭和11年(1936)生まれ。福島県出身。はじめ全日本中国拳法連盟の佐藤金兵衛師範に師事し、日本兵法大和道および柳生心眼流兵術を学び、後に菅野久師範について真蔭流柔術を学び、全伝を継承した。後年、自宅が位置する郷土埼玉に伝わった古流武術の調査・研究を志し、秩父伝気楽流柔術、三神荒木流捕手術などの実伝のほか、柔術を中心とした様々な古流武術の記録、保存に尽力された。科学技術翻訳士、行政書士、社会保険労務士などをこなしつつ、本誌「秘伝」などを通して多くの研究発表を手がけた。
4月16日(火)には地元・鶴ヶ島のメモリードホールにて、親族・極親しい近親者のみにて葬儀が行われる。
本誌「秘伝」が未だ季刊誌であった時代、講道館黎明期の四天王の逸話や嘉納治五郎の柔術修行に関する研究で好評を博し、明治期の古流柔術の活躍から海外へ広がった日本の「YAWARA」の広がりについてが、90年代に著書『YAWARA 知られざる日本柔術の世界』(BABジャパン刊。絶版)としてまとめられ、当時としては画期的な研究書として好評を博すと共に、現在につながる基礎資料としての役割を担った。
本誌誌面では、明治期の講道館柔道と古流柔術との葛藤や相克、真之神道流・三和無敵流など様々な古流柔術の研究を御発表いただき、あるいは古流武術における有職故実などについて読者への啓蒙に勤めていただきました。ここに謹んで、感謝と共に、ご冥福をお祈り申し上げます。合掌
(写真は、「秘伝」創刊号における「座談会 古流武術 A to Z」の扉ページ。上段、故島津兼治師範に技をかけてもらっている右側の人物、演武写真、下段右端の人物が山田先生)