月刊秘伝2025年4月号
■特集 “一撃粉砕”を実現する、鋼の拳足獲得への想い
人体の武器化とその必然
試割る鍛錬
◎第1章 岡崎寛人 (極真館)
「試し割り」の中に空手の原点を見る!
◎第2章 空手道尚武会
“試割りの達人”藤本貞治が示した鍛錬の精華
◎第3章 朴禎賢 (テコンドー・ファラン朴武館)
テコンドー 技の威力への矜持
◎第4章 上地流空手道振興会修武館
「試割り」は攻撃のみならず 上地流空手“キタエの矜持”
……
2017年2月5日、パンクラスのリングに登った田村彰敏選手はKO負けを喫し、病院へ搬送される。一見、大事ないとも思われたその裏で、脳に発生していたのは急性硬膜下血腫。生死の境をさまよう事になる。
何とか命は取り留めたものの、半身マヒ、目、耳、言葉の障害が残り、格闘家として活躍した姿が見る影もない状態に至ってしまう。
そんな中、リハビリとして始めたのは絵を描く事だった。「与えられたペンと紙、マヒした右手で純粋に絵を楽しみました。」と語る本人は、実は至って大らかでマイペース。そんな闘病の記録から、格闘人生、自分を支えてくれた人々、大好きなもの、そしてこれから......と、振り返りつつも未来を見やるエッセイを絵とともにまとめたのが本書だ。
格闘家とは、この上なく純粋な人種なのかもしれない。悔しければ純粋に涙を流し、感謝の気持ちにも涙が溢れ出す。そして、田村の闘病の日々には悲壮感はない。悩んでも仕方のない事には悩まず、笑う。
「脳をやられたおかげで余計な事考えられず、悩まずにすんだんですよ」
ある意味飄々とした日々の様子にはクスリとさせられ、時々ハッと、ホロリとさせられるのは田村の純粋な内面をそのまま見せてもらっているかのよう。
格闘技ファンのみならず、あらゆる方に一度は読んでほしい一冊だ。
ある日、田村は蛭子能収の肖像画を描く。
「なぜ蛭子?」と気になった方はぜひご一読を。
『オレの好きな48のファイトスタイル 格闘家にして理学療法士 奇跡の再起道』
田村彰敏 著