月刊秘伝2024年12月号
■特集 力を0化する!!
武術が到達した“柔の極致”
化勁
序章『化勁とは何か』
第1章『化勁の実戦用法』 宮平保(天行健中国武術館)
第2章『合気と化勁を繋ぐ術技』 高瀬道雄×臼井真琴×有満庄司
第3章『推手で磨く化勁の理』 日本武術太極拳連盟
第4章『化勁を錬る一人稽古』 遠藤靖彦(太我会)
■巻頭グラビア
中達也「形稽古の極意指南!」
佐久間錦二「新始動! 佐川合気実験室」
ベンジャミン ……
自然身法研究会では、混元太極拳宗師第一代、陳式十代伝人、馮志強老師の伝えた陳式混元太極拳を重要な柱の一つとしている。それは、陳式混元太極拳が、自然で無理ない動き、内功が練られる身のこなしであり、自然身法そのものだからである。
中国武術界の巨人、馮志強老師が逝去されてから2年が経ち、当研究会では馮志強老師直伝の様々な套路を忠実に伝承すべく「太極拳セミナー」を開催した。
太極拳は河南省に伝わっていた武術に道家の養生法(気功の源流)が結びついてできたと言われている。馮老師は、陳式第9世陳発科老師に陳式太極拳を伝授され、その友人であった胡耀貞老師に心意混元内功を学び、両者を融合し、本来の内功としての太極拳を今の時代に蘇らせたのである。
武術修行者だけではなく、高齢の方や病弱な方にも無理がなく、そして、内功としての効果が実感しやすいものへと、馮老師は改良を重ねた。混元太極拳は、現在、中国の太極拳界では一つの流派として認められ、世界中で多くの人が学ぶようになってきている。(写真は、今回の講習で、修了証記念として配られたもので、馮志強老師の写真は、伊豆の修善寺、旭滝で出口代表が撮ったものである。右上は陳発科老師、左上は心意拳の達人であり、中国気功の父ともよばれる胡耀貞老師)
馮老師は、陳発科老師に授けられた陳式伝統套路と単練法、また、胡耀貞老師に学んだ、心意拳、混元気功を融合して、混元太極拳の套路と内功法を多く編纂された。
陳式基本套路である一路83式は長大で習得が困難なため、入門者向けに馮志強老師が編纂したものである。陳式混元太極拳が普及したのは、この套路が作られたことによるところが大きいのです。一路83式の中から発勁技、震脚、蹴り技、跳躍技を省き、柔かく無理のない部分だけを取り出し、初心者や高齢者が内功として太極拳を練ることができるようにしたものである。その流れは、とても心地よく、丹田感覚が得られ、全身に勁が巡る感覚を得られやすい。そのことが陳式混元太極拳の魅力となり、全世界に広がるきっかけになった。
1無極起式 2金剛搗碓 3懶扎衣 4六封四閉 5単鞭 6白鶴亮翅?7斜行拗歩 8提収 9前?拗歩 10掩手肱捶 11披身捶 12背折靠?13青龍出水 14双推手 15三換掌 16倒巻肱 17退歩圧肘?18中盤 19閃通背 20撃地捶 21平心捶 22煞腰圧肘 23当頭砲?24収式
84年の来日から数年は、まだ混元24式が編纂されていなかったため、48式から日本の指導は始った。それで、24式ができるまでは、48式が馮志強太極拳の基礎であった。一路83式の中から重複する動作を省いて組み立てられた套路で、陳式太極拳の一路のほとんどの内容を含み、馮志強老師独特の風格が加味されている。後ほど、48式の前半の柔かい部分が24式の基となった。
本来、二路砲捶は、太極拳の柔軟さを基礎にしながらも武術色の濃い、激しい動きが特徴である。馮志強老師は、太極拳の本意である、柔らかさと内功(心身を内側から鍛える技)に基づき、元来、激しい剛の連続であった動作を柔軟な技の流れに変えていき、陳式混元砲捶46式、砲捶62式を編纂された。混元砲捶は、老若男女誰もが練習できる太極拳となり、内功を練るにも適し、健康増進にとても効果の高い套路となっている。
「剣(つるぎ)」とは両刃の直剣で、48式剣は陳式太極拳の伝統套路である。馮志強老師が陳発科より伝承してきた型である。直突きと螺旋の繊細な円が特徴である。陳式槍は13の基本操法がり、用法は剣と似ていていて、螺旋の直突きが特徴である。
太極挙には「推手(すいしゅ・トイショウ)」という二人で組んでの稽古法がある。内功で得られたパワーを攻防の技に用いていく。「推手」では相手に付いて離れず、相手に従い相手と一体化することをまず学ぶのである。次に相手の攻撃力を利用して相手が自然に崩れる方向へと誘うという高度な技を学んで行く。ただ「推手」は、はじめから攻防を意識しすぎると、単なるぶつかり合いや素早さに始終してしまいがちだ。
「推手」では、初めは互いが互いに気を合わせるという繊細な感覚が大切である。つまり気を交流しながら、相手の力が今出ようとする初発をとらえる感覚を養成していくのが大切である。
気舞(きまい)とは、伝統的な気のトレーニングを基礎に、自然の地・水・火・風・空を流動する気の流れを表現する舞いである。自然身法の総合的表現といえるのである。気舞いは、気功、内功、太極拳などを基礎にした創作の舞であり、即興的にアートとして表現していくものである。
今回の講習会では、指導員による、太極棒を用いた、集団の気舞を演武した。
馮志強老師は、陳式機械(武器法)の中で、刀を特に得意としていた。出口代表は、馮老師に学び始めた3年前より、刀の基本操法、用法、套路を伝授された。
今回の講習会は、馮志強老師の3回忌記念であり、師から学んだ様々な套路を忘れてはいけないという使命感から多くの套路を学ぶ機会とした。套路には、先人が生涯をかけて修練してきた、技法が込められ、精神が貫かれ、師の風格がある。
◎馮志強老師は自然の中で、気を練ること重視していた。それを学んだ自然身法研究会代表・出口衆太郎師範は、国内外の様々なパワースポットで気を練ってきた。大自然の気を観ずる方法を解説した記事が月刊秘伝2014年7月号掲載されている。
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