月刊秘伝2022年3月号
「スポーツ式の、つまり西洋式の身の置き方、動き方は、老熟ということを知らない。
老熟を知らない世界に、名人が生まれるはずはないのだ」
(前田英樹『剣の思想』より)
上記、新陰流を長きにわたり修める前田師の言葉の通り、我が国の武術は歴史上、老熟の境地へと至る鍛錬の末に「名人・達人」の名を馳せた数多の武術家を輩出してきた。
本来の武道・武術とは、年を重ねるごとにその術や技が深まっていき、一生涯上達できるものとして、存在してきたはずである。
そんな先人たちが手にした〝円熟のチカラ〟を、本特集では「衰えない力」と称し、加齢とともに減じてしまうと考えられているものとは対極に〝増加〟する、武道・武術伝統の「心技体」の正体に迫ってみたい。