世界が注目する日本発祥の武道!
武道が「インバウンド誘客の促進」と「地域活性化」の"キラーコンテンツ"に!
スポーツ体験と観光を掛け合わせた旅行「スポーツツーリズム」を通して地域・経済の活性化を推進するスポーツ庁。本年度の重点テーマとして新たに掲げているのが、世界に誇る日本の豊かな自然資源を活用した「アウトドアスポーツツーリズム」と、世界中からの関心が高い日本発祥・特有の「武道ツーリズム」である。
日本の歴史・文化・精神性を色濃く伝える武道は、訪日外国人にとって"見るもの"(例:大相撲、柔道、空手、剣道など)として、また"するもの"(例:世界中での空手愛好者は1億3,000万人に上るという統計もあり)として、非常に人気が高いという(参考「スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査報告書」)。日本発祥の武道は地域資源と掛け合わせることで、観光、地域振興、また武道自身においても「新たな価値」を生み出す、「キラーコンテンツ」となりうる可能性を秘めているのだ。
そんな中、スポーツ庁は去る9月2日(月)、武道ツーリズム推進にあたっての課題と対応策を検討するため、「第1回 武道ツーリズム研究会」を開催した(於:株式会社JTBコミュニケーションデザイン 12階会議室)。今回の「武道ツーリズム研究会」には、スポーツ庁から鈴木大地長官、担当参事官等の他、下記の団体・企業から観光、武道に精通した委員たちが参加。
・公益財団法人日本武道館
・グーグル合同会社
・日本航空株式会社
・株式会社やまとごころ
・株式会社 Voyagin
・KNT‐CTホールディングス株式会社
・株式会社JTB
・金沢文化スポーツコミッション
・株式会社アイサイト
・山梨学院大学 William Reed氏
(※研究会当日は数社の欠席あり)
また、アドバイザーとして日本文化財に精通したDavid Atkinson氏(株式会社小西美術工藝社)が参加。オブザーバーの一員として、武道・武術の専門誌「月刊秘伝」を発刊する株式会社BABジャパンも参席した。
(写真提供:公益財団法人日本武道館)
スポーツ庁における「武道ツーリズム」の取組と課題
研究会は、委員からの推薦を受けて座長に選出された、早稲田大学スポーツ科学学術院・原田宗彦氏によって進行、まずはスポーツ庁から「武道ツーリズム」の取組と課題について次の発表があった。
(1)「地域の意識啓発及びコンテンツ開発・受入体制強化」
(2)「国・企業・地域・団体等の連繋強化」
(3)「官民連繋プロモーション」
(1)においては、ベーシックプログラムの作成、他言語対応可能な人材の育成・確保、施設の改修等インバウンドの受入環境整備、人・物・施設等の資源情報データベースの構築、インバウンドニーズ調査、「武道発祥の国=日本」の国際的認知度向上にむけて「世界武道GAMES(仮称)」の開催などが取組、課題として挙げられた。ここで問題となるのが、武道愛好家といっても、その傾注の度合いによって「コア層」「ミドル層」「ライト層」との違いが存在することである。たとえば、体験プログラムのモデルケースを作成するにしても、コア層向けとライト層向けではその内容は当然異なってくる。日本武道館事務局長の三藤芳生氏からは「武道は従来、師弟の間にて伝承されるもの」であるとのを指摘があったが、ミドル層・コア層においては"師弟"関係を超えた他の指導者に教えを乞うことの難しさも存在する。また「世界武道GAMES(仮称)」については、韓国で同様の世界大会がすでに過去2回開催されているとのこと。ぜひ武道発祥の国として、近い時期での実現に期待したい。
(2)においては、関係者が一体となって武道ツーリズムに取り組んでいくための中間支援団体「武道ツーリズム推進機構(仮称)」設立の構想が練られている。この創設については、次回以降の研究会にも課題として引き継がれた。
(3)については、すでにスポーツ庁が武道ツーリズム啓蒙のために官民連繋して作成した動画が一定の成果を上げているが、アドバイザーのDavid Atkinson氏からはデジタルプロモーションにおいて、インバウンド側の視点に立った更なるマーケティング調査に則ったアプローチの必要性が指摘された。
事例紹介:日本航空「SAMURAIKYUSYU」
&アイサイト「林崎居合神社居合道抜刀体験プログラム」
続いて、下記二社における武道ツーリズムの取り組み事例が発表された。
まずは日本航空株式会社が取り組んでいる「SAMURAI KYUSHU」の紹介。その地理的なアクセスの良さからアジアからの訪問が多い九州だが、欧米豪からこの地への訪日はまだまだ少ないという。そこで欧米豪の武道愛好家をターゲットに、日本航空では「鹿屋体育大学」と「福岡教育大学」で剣道クリニックを開催、一流の指導者から実技と理論を修得できると言う。今後はそこに、日本刀鍛錬所訪問や弓道体験、城や武家屋敷での宿泊等を掛け合わせて、武道大国九州の活性化を目指しているという。
株式会社アイサイトは山形県村山市において実施している「居合道抜刀体験プログラム」について紹介。居合道の始祖・林崎甚助重信公が祀られている日本一社 林崎居合神社において、居合道の基本「初発刀」や「試斬」の体験、「居合神社サムライショー」などさまざまなプログラムを開発。日本刀の神聖さを実際に手に取って触れられることが好評を博しているという。アイサイトによれば、プログラムの鍵は指導者の質にあるとのこと。経験豊富な指導者の理解と協力が欠かせないと語っていた。
また本誌でもお馴染み山梨学院大学教授のWilliam Reed氏は、スコットランド空手道連盟会長のロナウド・スチュワート・ワット氏が来日した際の事例を紹介(「月刊秘伝」19年3月号にて、その詳細を紹介)。武道経験が深い外国人修行者の多くは、すでに日本の指導者とのパイプを持ち、訪日武道修行の経験も多数ある。今回のワット氏の来日でも、リード氏が甲斐武田氏の菩提寺である山梨県甲府の恵林寺にお連れし、茶道を体験してもらったところ大変喜ばれたとのエピソードを紹介。武道を支える周辺文化の価値について、インバウンド側の視点からも提言がなされた。
「武道ツーリズム」へ参加しよう!
「武道ツーリズム」が交流人口の拡大、地域・経済の活性化に寄与するところは大である。国内においても武道人口の減少が危惧される中、武道ツーリズムによって「武道の新たな価値」が創造されることも大いにあり得るだろう。特に後継者不足が囁かれることの多い地域に根ざした古流武術などは、ぜひともこの機会を有効に活用したいところである。スポーツ庁をはじめとした官民一体となった取組が、その支えとなるはずだ。
「武道ツーリズム研究会」の開催は今年度、三回を予定しているという。次回、「第2回武道ツーリズム研究会」は11月12日(火)の開催を予定されている。
◎スポーツ庁ホームページ
◎第1回 武道ツーリズム研究会
◎武道ツーリズム - スポーツ庁 Web広報マガジン|DEPORTARE