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【訃報】中川二三生師範(太極拳練神会)、御逝去

中川434.jpg 中国武術によって養われる身体内部からの”力”=内勁の威力を知らしめる高い功夫で知られた太極拳練神会中川二三生師範が、今月(10月)16日(金)に御逝去されました。享年72。

 昭和23年(1948)生まれの中川師範は、16歳で松濤館空手に入門したことを皮切りに、その後、入隊した自衛隊では北海道・紋別の遠軽25連隊に配属され、最も優秀な者だけが選抜されるレンジャー部隊に所属する。過酷な訓練の中、戦闘訓練として自衛隊格闘術や銃剣道を学ぶ一方、部隊内の合気道、空手道サークルにも所属し、まさに訓練と武術に明け暮れる日々を過ごす。ちなみに、この合気道を指導していたのは、大東流合気柔術の達人として知られる堀川幸道師範であった。除隊後、東京にあって、仕事の傍ら、「試合う合気」として知られる武田流中村派と、極真空手の道場に通う。やがて「体格を超えた強さ」というテーマのもと、沖縄を訪れ、上地流空手を中心に、各地を巡って空手の真髄を求めた。

 それでも生涯の師とする流派、人物とは出会えないまま帰郷した28歳の時、知人に紹介された日本人の禅僧から「身体の動かし方」から「人間としての生き方」までを学ぶこととなる。知る人ぞ知る人物として、武術界でも何人もかの禅僧を訪ねているが、中川師範はただ一人、28年間を通い詰め、多大な影響を受けることとなる。その一方、30歳の時に知遇を得た北京の八極拳名家、張旭初老師に師事し、李書文系八極拳をはじめ、師の伝える伝統套路や気功を余すところ無く伝えられる。

 以後、太極拳練神会を主宰し、東京都武術太極拳連盟理事なども務めて、日本の武術太極拳の振興、技術の向上に貢献する一方、会では各種中国武術をベースとして独自の経験を活かした、内勁を養う技術体系を後進へ指導してきた。

 近年、脳梗塞を起こしてから、その後、回復はしたものの、後遺症から特に視力が著しく衰えるなど、身体的な面では往年に比べると見劣りするのは否めなかったが、逆に内功の面ではさらに鋭さを増した観があり、弊社(BABジャパン)におけるDVD「内勁の武術とは」シリーズや雑誌「月刊秘伝」誌上において、類い稀なる技の威力を見せつけていただいた。最後まで指導の場に立った姿は、特に鬼気迫るものを周囲に感じさせたというが、コロナ禍の中、稽古会も休止を余儀なくされた今年、長年、東洋的治療で克服されてきた大腸癌の転移などもあり、還らぬ人となった。

 なお、葬儀は近親者のみにて執り行われた。太極拳練神会は、師の遺志を継ぐ高弟の方々によって存続される。

 単に中国武術というカテゴリには納まりきれない、武術の深奥において手に入る”力”を、その生き様として我々に示していただいた中川二三生師範。感謝と共に、御冥福を心よりお祈り申し上げます。

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