“今や幻の中にしか存在しない古流武術の復元・再生への試み”
それは、賛否両論と言うよりも「否定」的見解が支配的であったのが、従来の古流武術の世界であろう。そんな〝紛い物〟のレッテルが当たり前に貼られてしまう「復元・再生」とは、真に価値のないものなのだろうか?
時代の移り変わりの中で、今なお多くが失われ、あるいは変容していく古流武術という存在が、未曾有の時代を生き抜き、後世へ受け継がせるものとは何なのか?
そこに「復元・再生」という試みがどのように関わることができるのか?
平成の30年、古流武術を見続け、共に歩んできた本誌だから……
今、新たな時代へ向けた提言の一つとして、今特集に〝挑み〟ます。
特集序章では、〝今なぜ、古流武術の復元・再生へ目を向けるのか?〟
その現状や問題点、難しさを改めて確認し、翻って、
復元や再生という試みが持つ可能性について考えてみたい。
近代となって新たに勃興した講道館柔道の前に、最初に立ちはだかった最大最強の古流柔術、それが「戸塚派揚心流」。その系譜を継いだ楊心古流柔術も昭和の終わり頃には関東周辺にその姿を見る機会は無かった。
そんな流儀の行く末を見据え、筆の中にその想いを託した最後の伝承者、保立謙三師範の遺産から、昔日の姿を再生する試みについて特集第1章では御報告いただいた。
特集第2章では、好評連載「津軽の剣」でもお馴染みの、卜傳流剣術伝承者・小山隆秀師範の登場。郷土武芸再生の試みから見えてきた、未来へ繋ぐ伝統継承の在り方について御寄稿いただいた。
失伝した古流の復元が試みられているのは日本武術だけではない。
特集第3章では、キャッスル・ティンタジェル城主 ジェイ・ノイズ師が長年にわたって取り組んできた西洋剣術再生の道、そして現代に甦った中世西欧の〝騎士の剣〟、その知られざる戦闘法を紹介する!
特集最後の第4章では、〝昭和の剣聖〟と言われた剣道家、持田盛二を育んだ上州の名流「法神流」。
辛くも命脈を保った同流には、今は失われてしまった〝剣を支えた〟躰(体)術体系があった。
その復興を試みる同流伝承会の試みを訪ねた。
兵法法神流流儀伝承会
江戸時代からの身体文化をそのまま、今に伝えていると見られがちな「相撲」。
しかし、そこにも伝統的な「断絶」は現れているという。
相撲鍛錬を代表する「四股」を中心に、失われつつある伝統的な相撲文化の効用を探求する松田哲博(元・一ノ矢)氏に、その現状を語っていただいた。
勝ち負けを超えた柔道の〝楽しさ〟を、等身大の 少女たちの青春を通して描く『もういっぽん!』。
今回は、この新世代の柔道漫画の作者であり、 自身も柔道経験を持つという村岡ユウ先生に、 本作に込めた想いと柔道の魅力を語って頂いた!
取材協力◎秋田書店
コロナ禍によって、多くの武術がこれまでのような稽古が不可能になり、 その収束の予兆はいまだ見えていない。しかし、このような状況であっても術技を磨く方法はある。
ひとつは〝一人稽古〟。そしてもうひとつが、木刀などの武器を介した〝遊び稽古〟だ。
今回は、現代を代表する達人の一角こと黒田鉄山師範が重ねてきた一人稽古の軌跡と、 非接触を保ちつつ一点集中で極意を追究可能な、新たなる遊び稽古を紹介しよう!
振武舘 黒田 鉄山
幕末の世に勇名を轟かせた天然理心流は、 その体系のうちに居合・抜刀術を組み込んでいる。
居合専門流派ではない、剣術流派の「居合」とは、 いかなるものであるのか。
不意打ち、要人警護、あるいは急襲……。 〝行住座臥〟戦う者としての 心得を求められた侍たちの、 実戦用法がそこには秘められている!
天然理心流武術保存会 加藤 恭司