太古の昔から、狩猟や漁労、また神事や卜占に使用されてきた日本の弓矢は、やがて武士たちの重要な武器として用いられるようになる。
そして、さらに時代が下ると、鍛錬や嗜みとしての弓術へと発展していく。
本特集では、日本の弓矢がどういった素材で作られ、どういった用途に用いられてきたか、その歴史的変遷を明らかにするとともに、弓術流派や様々な目的に応じた射法を解説する。
また、現在弓道を通じて、心身を磨き、日々の喜びとする弓道家たちに、その取り組みについて話を聞かせてもらった。
武器としての弓矢、鍛錬としての弓の道――奥深き日本の弓の世界に迫る!
日本における弓矢の歴史は、他地域と同様に旧石器時代からと考えられている。
縄文時代には、狩猟や漁労といった生業と神事、卜占などに用いられていた弓矢は、やがて集団同士の戦いにおける武器としても大きな役割を果たすようになる。
特集序章では、弓術文化を専門とする黒須憲・東北学院大学教授が、日本における弓矢の素材や形状、そして用途の歴史的変遷から、鍛錬、嗜みとしての弓術についてまでを紐解く!
文:黒須 憲
特集第一章では、日本の弓術流派の概要と、目的に応じた様々な射法について、弓道史や武道論を専門とする松尾牧則・筑波大学准教授に解説いただく。
各弓術流派の成立から、歴史的流れまでが紐解かれ、歩射における目的に応じた五つの射法、的前、巻藁前、差矢前、遠矢前、敵前について、実演とともに示される。
日本における弓術技法の根幹部分を見ていこう!
文:松尾牧則
古の戦場において、最も多くの命を奪った武器は弓矢であったという。
故にその性能をより高めるべく、数多の工夫と進化が重ねられてきた。
特集第二章では、籏谷嘉辰師範が主宰する戸山流流鏑馬の姿から、かつて武士が用いた戦場の弓馬術、そして実験によって明らかにされた、武器としての弓矢が秘める驚異的な威力に迫る!
戸山流流鏑馬弓馬会 会長・籏谷嘉辰
女性としても小柄な部類に入る体形で、強弓とも言える重さの弓を使い、2014年の世界弓道大会の個人戦では優勝を果たす。
福岡県久留米市弓道連盟に所属する藤野小百合氏は、小学校の教員を務めながら、今も日々の稽古を続け、腕を磨いている。
輝かしい戦績を残してきた藤野氏に、その弓道人生と、弓を引く際に意識する技術的ポイントや心の置き方について聞かせてもらった。
弓道サークル「弓と禅 You, Me and Zen」は、「弓道を身近に、もっとアクセスしやすいものに。そして、より多くの人に弓の世界に触れてほしい」そんな思いのもとに活動を行っている。
東京や埼玉などでの稽古会では、国籍、性別、年齢、経験の有無に関わりなく参加者が集い、また弓道を通じて海外との交流もはかっている。
様々な形で“弓道”を発信する「弓と禅」の創設メンバー3人にお話を伺った。
今回、御登場いただくのは、独自の真鍮直付け彫刻で様々な作品群を生み出してきた彫刻家、版画家の池田宗弘先生。
氏は同時に小野派一刀流を長年研鑽する武術家でもある。
芸術家としての独立独歩の表現に、古流武術の教えと真理が息づく彫刻家・池田宗弘氏の造形論の中に、武から人生へと拡がる極意の世界が見えた。
日本の古流武術と沖縄の唐手を融合させた精妙なる術理を特徴とし、空手四大流派の一角にも数えられる和道流。
そして、「裏の組手」は初代大塚博紀宗家が考案し、三代宗家が新たに体系化した組手形だ。
身体内部を練り上げ、空手の実戦力を作る、和道流独自の対人稽古に迫る!
和道流空手術・柔術拳法三代宗家 大塚博紀
達人たちが時折見せる驚異的な“力”の表現、そのパワーの源とは一体何なのか?
その“力”を手に入れるには!?
太氣至誠拳法(太気拳)の若き指導者として「武禅会」を主宰する松井欧時朗師範が、長年の経験則から導き出した「力(パワー)」というものの正体と、その身に付け方をまとめた「トライポッド・メソッド」を、ここに御紹介いただく。
数々の中国拳法が紹介される、中国武術を主題とした漫画の金字塔『拳児』(原作:松田隆智、画:藤原芳秀)で、その激しい発勁を印象づけた「忽雷架」。
陳氏太極拳のメッカ、陳家溝に近接する陳新庄に代々伝えられたこの武術は、その強大な威力ゆえに秘匿される運命を辿った。そんな忽雷架の誕生とその正宗を継ぐ張家の歴史へ迫る「歴史編」を今号ではお届けする。