「柔道は強い!」─本特集では、改めて、そのことに焦点を当てた。
嘉納治五郎が、自らが修めた古流柔術をもとに、他の各流各派も研究し、創意工夫を加えて創り上げていった講道館柔道。そこには当然、永く受け継がれてきた相手を倒すための優れた“術”があった。さらには、「乱取」稽古の確立は、初心者にも“強さ”を獲得することを可能にし、熟練者には技を磨き上げる稽古法として機能した。
本特集では、“柔道の技術”を武器に格闘技の舞台で闘う選手や、柔術仕込みの寝技を駆使して柔道界のトップクラスで活躍する現役柔道家にも登場してもらい、柔道技の格闘“術”としての有用性を具体的に示してもらった。
「総合格闘〝術〟としての柔道」─その強さに迫った!
特集の序章は、嘉納治五郎師範がどういった理念・思考のもと、講道館柔道を創り上げていったのか、また、その理念・思考が講道館柔道の発展にどのように寄与したのかについて見ていこう。新しい技術を導入する「進取の気性」、優れた練習法を定着させるための「システム」の構築、違いを受け入れる「懐の広さ」─柔道が特定の武術家だけでなく、多くの人々が“強くなれる格闘術”として発展していった要因を考察する!
柔道の選手として国際大会で優勝するなど数々の実績を残した小見川道大選手は、その後、主戦場を総合格闘技に移す。しかし、今も小見川選手は“柔道家”としてリングに立ち、戦い続けている。古き柔道の良い部分を復活させて新しく柔道を形づくっていく。それが小見川選手が提唱する「NEO柔道」である。柔道で培った心身が総合格闘技のリングで十二分につかえることを証明し続けてきた小見川選手の技に迫る!
取材対象:小見川道大
武術や格闘技、特に武器を持たない徒手の闘いにおける「小よく大を制す」の難しさは、厳然としてある。だからこそ、それを実現させることに人々はロマンを感じるのだろう。特集第二章では、実際に「小よく大を制す」を成してきた、講道館柔道黎明期から現代に至るまでの柔道家たちを紹介する。また、その一人である朝飛速夫師範のご子息であり、指導者として少年少女から有力選手までを育ててきた朝飛大師範に、体格的に勝る選手との闘い方について訊かせてもらった。
取材対象:朝飛大
柔術の技術を取り入れる柔道選手は一定数存在する。しかし、その吸収度合いと活かし方のオリジナリティーにおいて、角田夏実選手の右に出る者はそうはいない。巴投げや関節技を軸に、強豪ひしめく日本の女子軽量級の中で、そして世界の舞台で活躍してきた角田選手。その柔術的ムーブを駆使した“柔道技”の奥義を、本人による解説のもと紐解く。
ここでは、講道館柔道がその稽古の主体に置いたことで、後の「柔道」を規定していった「乱取」の歴史から、そこに“生み出された”、あるいは“消えていった”技術を振り返ることで、改めて「柔道」の存在意義を問い直してみたい。
(原文:岡野修平 再構成・執筆:中嶋哲也)
1950年前後、ブラジルの地で不敗を誇ったエリオ・グレイシーに対して、圧倒的な強さを見せつけた木村政彦。“木村の前に木村なく、木村の後に木村なし”と言わしめたこの不世出の柔道王よりも前に、グレイシー一族を驚嘆させた柔道家たちがいた。シリーズ連載「海を渡ったサムライ ブラジル柔道の先駆者たち」第2回は特別編として、ブラジルの地で柔道の真価を遺憾なく発揮した「小野安一・直一」兄弟を御紹介する。その活躍は今特集を締め括るに相応しい、柔道の“強さの存在証明”に他ならない。
昨今のコロナ禍において、武道・格闘技を取り巻く環境も、劇的な変化を遂げざるを得なくなっている。緊急事態宣言の発令、ロックダウン下の稽古、今後の武道・格闘技のあり方まで、武道・経済学の双方に通ずる松原隆一郎教授にお尋ねした。
『沖縄古伝剛柔流拳法で解く! 空手の不思議』で好評を博した、沖縄空手道拳法会静岡県支部「剛琉館」の佐藤哲治師範が、再び、沖縄空手の深奥に迫る! 特長を異にするとみられがちな沖縄の首里手・泊手系の型と、那覇手の型。この両者をつなぐものとは何か? 「接近戦」というキーワードで解かれる、沖縄空手の実戦技法を紐解く!
文:佐藤哲治
斬法総合研究所を主宰する後藤健太氏が斬るという刀法の本質を体系化した「真剣斬法」。「基本、抜刀術、剣術、居合、試斬」という5つの技法群から、真剣(=心剣)を身体化する武士の実学と斬る要訣(股関節、肩関節=骨遣い)を学ぶ!
文:後藤健太