前回紹介した新海正彦さん(「アウェアネスアート覚技」主宰)との「第6回・身体感覚セミナー」、何とか無事に終えることができました。
8月のセミナーはお休みにしたので、9月から再始動。すでにあれこれと準備を始めているところですが、ここではセミナーの話から少し離れ、今月発売の「月刊秘伝」9月号に掲載される対談企画、「身体知の世界へようこそ」について紹介したいと思います。
第4回を迎える今回のゲストは、「骨ストレッチ」の創始者である松村卓先生。
最初の本(『誰でも速く走れる骨ストレッチ』)をプロデュースしたのが2011年ですから、そこから数えても丸3年、ここに来て、このメソッドの名前を耳にする人もかなり増えてきたと思います。
"ブレイク"の大きなきっかけになったのは、5月に刊行した甲野善紀先生と松村先生の"師弟対談"『「筋肉」よりも「骨」を使え!』(ディスカヴァー携書)。
ご覧になった方もいるかもしれませんが、これが当初の予想を超える大反響!
発売1ヶ月でなんと5万部を突破し、松村先生の講習会も連日の超満員。神田の三省堂書店本店で行われた出版記念トークショーには、100名にも及ぶ参加者でふくれあがりました。
陸上短距離のスプリンターとして、体育会の世界、筋トレの世界にどっぷり浸かっていた松村先生が、トレーナーへと転身する過程で、対極にあった武道・武術の世界の身体の使い方を知り......。
さらに言えば、動作の根幹にある「骨の使い方」を知り......。
それまでの身体の常識がすべて変わるくらいの衝撃を受けたなかで生まれたのが、「骨ストレッチ」です。
武術の秘伝的なエッセンスを受け継ぎながらも、老若男女、すぐにおぼえられ、誰でも効果が体感できる......これ以上ないくらいに再現性の高さがその特徴。そう、「秘伝」が完全に「秘伝」でなくなってしまったのです(笑)。
この不思議な骨ストレッチを通じて見えてくるのは、武術的なものとスポーツ的なものの融合、骨と筋肉の調和......。
これからの時代に最も必要とされるエッセンスが、そこには不思議なくらい凝縮されていると感じます。
月刊秘伝2014年9月号「身体知の世界第4回 松村卓 骨ストレッチに学べ! 脱・筋トレ信仰のススメ」(引用はじめ)
長沼 骨をつかむというのは、誰にでもできますよね。プロでも一般の人でも。疲れやコリを取りたい人から始まって、スポーツでハイレベルの記録を出す人まで、再現性が高いですね。
松村 骨は、つかまれると一定の圧がかかるので、必要な刺激が体に伝わりやすいと思うんですよ。それが骨にスイッチを入れることになる。単に「右の肩甲骨を動かしてください」って言ってもなかなか難しいですが、骨ストレッチで手首をほぐせば、誰でも自動的に肩甲骨が動きます。考えなくても、動作さえすればほぐれるんです。一般的なストレッチに比べて、あまりにもほぐれるんで、拍子抜けしちゃうほどです。例えば準備運動で、よく手首足首をブラブラさせるじゃないですか。それをやってから腕を回すと、重くないですか? アキレス腱を伸ばしてから歩いてみると、体、固くなってません? 僕はそれに気付きました。それが、骨ストレッチをやると、腕はぶるんぶるん回るし、体が軽い。
長沼 武術でも、達人レベルの人というのは、無意識に骨を使えているはずですよね。でも、なかなか人に教えられないし、伝えられないから、ある程度クローズしたところでしか広まらない。松村先生の場合は、メソッドの型がすぐに覚えられることと、ビフォー・アフターの比較ができるのは大きいですね。これは武術とスポーツの架け橋になるような気がします。
(引用おわり)
骨ストレッチに限らず、いま、「目に見える世界」から「目に見えない世界」、「数字・データ」から「感性・感覚」の世界へのパラダイムシフトが、徐々に進行しているのを感じます。
目に見える数字やデータを、すべて否定しようというわけではありません。ただ、そこに表しきれない感覚の中にこそ、先人たちが追求し、築き上げてきた英知があると感じている人も少なくないでしょう。
それは『腸脳力』の世界で語ってきたハラの世界そのもの。これからプロジェクトとして展開していく『ミトコンドリア・ワールド』や『フードジャーニー』も、ここにつながってきます。
すべてがつながっていること、そのつながりを妨げていたものが我々の思考のなかに存在しているのではないかということ......。
それをハラで感じつつも、あえて言葉や文字を駆使して皆さんと共有していくことが、僕自身の仕事です。次回は、9月のセミナーの紹介をしつつ、この点をグッと掘り下げていきましょう。(つづく)
秘伝アーカイブ「骨整体で学ぶ─骨(コツ)の遣いかた」 スポーツケア整体研究所 松村卓