日本における凶悪事件の数は、1950年代をピークに、現在に至るまでおおむね年々減少している。しかし、他人を巻き添えにして死のうとする「拡大自殺」や、公共交通機関で不特定多数の人々を死傷させる事件が、この数年だけでも数多く起きていることも事実である。誰にとっても、襲撃者から身を護らなければならない状況に遭遇し得る社会に私たちは生きている。
我が国における「身を護る」ための武技は、明治時代となり、近代社会が始まるとともに、一般の人々が状況に合わせて用いることのできる「護身術」として形作られてきた。そして現在、現代の状況に合わせてアップデートされた様々な護身術の形も生まれている。
今特集では、武術家や元警察官、元特殊部隊員たちに、様々な状況での「危機管理術」や「護身の技術」など、「身を護るための術(すべ)」を解説とともに実演してもらった。武術の技術を活用するものから現代社会の要請によって生まれてきたものまで、「身を護るための思考と技術」の今をお届けする。
書店では、今月号だけでなく秘伝誌のバックナンバーを始め弊社の書籍、DVDもお取り扱いお取り寄せが可能です。是非書店でお手にとってご覧ください。
現代における護身という局面で、伝統武術に何ができるか? 沖縄の実戦中国武術家・宮平保師範は、護身において最も大切なのは、「テクニック」ではなく「マインド」であると語る。特集1章では、勝つためではなく生き残るために磨かれてきた、中国武術のリアル・セルフディフェンスメソッドを紹介しよう!
特集第2章では、「護身術」が意外にも近代に入ってから、一般的に使用され出したワードであることを踏まえ、時代とともに移り変わる「武道・武術」が、どのように「護身術」と関わってきたのか。「護身術」と深い関わりを持つ“活字文化”の側面から考察してみたい。
特集第3章では、警察、あるいは自衛隊の元特殊部隊員が在籍し、その経験と知識を活かして、襲撃者から身を護るための護身具を研究、開発する田村装備開発に登場いただいた。その護身具の名は、“守護臣”。筋力や運動神経が特に優れていなくても、つまり老若男女誰もが使いこなすことができるよう工夫されている。護身の知恵が詰め込まれた、この“護身の武器”について、詳しくお話を聞かせてもらった。
根岸流第七代、白井流十四代、山本流居合術十六代宗家を継承する古武術家。早坂義文師範は、警視庁に入庁され、捜査一課、鑑識課検視官などを歴任されている。犯罪の最前線に立ち、検視官として人の死にリアルに対峙された経験をふまえ、犯罪危機に際して身を護るための方法を教えていただいた。
自分と相手を傷つけずに護り、おさめる「自他護身」を実現するために「護道」を創始した廣木道心宗家。特集最終章では、廣木宗家に、危険から身を護るために必要な意識の在り方から、自身の実体験を例とした自他護身の技を示してもらった。事前に異変を察知し、相手の攻撃を先に封じていく「先制防御」という考え方と技術に迫った。
古武術が秘める奥深さ、面白さを日本人以上に楽しむ外国人武道家は今や珍しくない。
かの達人・黒田鉄山師が厚い信頼を寄せる愛弟子、ラッセル・ハスキン氏も、その一人だ。
医療機器関係の会社に勤務する一流のビジネスマンでもあるラッセル氏に、振武舘武術の難しくも尽きせぬ魅力を訊く
中国武術劇画の金字塔『拳児』(松田隆智原作・藤原芳秀作画)で、主人公・拳児の師となる劉月俠(モデルは台湾武壇総帥・劉雲樵老師)の若き日に、大きな影響を与える武術家として登場する「宮宝田」。八卦掌創始者・董海川から、王宮の護院の任を受け継いだ尹福を経て第三代となる宮宝田は実在の人物であり、その八卦掌を学んだ劉雲樵老師と武壇での教学にも、多大な影響を与えたと言われる。
そんな宮派八卦掌が、大陸の地に残った系譜が現在も健在であるという。
今なお宮派八卦掌を受け継ぐ王翰之老師を上海に訪ね、その〝真実〟を訊いた。
協力◎上海市八卦掌協会:王天灝副会長、唐龍法副会長、孫治常副秘書長、朱海昱副秘書長、丁楽副秘書長
糸東流開祖・摩文仁賢和が呉賢貴より学んだ白鶴拳。
以後、六段以上の高段者のみに数本ずつ別伝として伝えられてきたのが、糸東流白鶴拳法の形である。20本に及ぶそれらすべての形を修め、現在も研究を重ねる日本空手道糸東流研武会真武館・祖父江利久師範に、空手の源流との趣深い、〝柔らかく危険な〟白鶴拳について紹介いただいた。
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